【2026年7月】観光地・温泉街のクマ対策とは?自治体・宿泊施設の最新事例と旅行者ができる安全対策を徹底解説

観光地でもクマ対策が必要な時代へ

「クマは山奥に生息する動物だから、観光地で遭遇することはない。」
そのようなイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし近年では、住宅地や商業施設だけでなく、温泉街やホテル、キャンプ場、登山道などの観光地でもクマの目撃情報が相次いでいます。
環境省によると、2025年度は全国で238人がクマによる人身被害を受け、死亡者数も過去最多となりました。クマの生息域の変化や人の活動範囲の拡大などを背景に、観光地における安全対策の重要性はこれまで以上に高まっています。
本記事では、観光地で実際に行われているクマ対策を自治体や宿泊施設の導入事例を交えながら紹介するとともに、AIカメラや電気柵など最新技術の活用方法、旅行者ができる安全対策についても分かりやすく解説します。
なぜ観光地でクマの出没が増えているのか

クマの出没が増加している背景には、一つの理由だけではなく複数の要因があります。
1. クマの個体数が増加している
環境省などの調査では、ヒグマ・ツキノワグマともに長期的に個体数が増加傾向にあります。
さらに、保護政策によって生息域が拡大したことも、人との接触機会が増えている要因の一つと考えられています。
2. 木の実不足による餌不足
クマの主食であるドングリやブナの実が凶作となる年には、餌を求めて人里へ下りてくるケースが増えます。
また、
- 柿
- 栗
- 生ごみ
- キャンプ場の食料
など、人間が残した誘引物がクマを市街地へ引き寄せる原因になっています。
そのため、現在では「クマを寄せ付けない環境づくり」が重要視されています。
3.人とクマが接触する機会の増加
登山やキャンプ、トレッキング人気の高まりにより、これまで人の利用が比較的少なかった山間部にも多くの観光客が訪れるようになりました。
地方創生やインバウンド需要の拡大によって、自然豊かな地域を訪れる人が増えた結果、クマの生息域と人の活動範囲が重なり、遭遇する可能性が高まっています。
観光地で実施されているクマ対策
現在、多くの自治体や宿泊施設では、さまざまなクマ対策を組み合わせて安全性の向上を図っています。

電気柵による侵入防止
現在、最も効果が高い対策の一つとされているのが電気柵です。
クマは一度電気ショックを経験すると、その場所へ近づきにくくなることが知られており、農地や養蜂場だけでなく、宿泊施設でも導入が進んでいます。
実際に長野県の蓼科地区では、温泉旅館の貸切露天風呂周辺へ電気柵を設置し、クマの侵入防止対策を実施しています。
また、大町温泉郷のホテルでは、
- 二重フェンス
- センサーライト
- クマ鈴の貸し出し
- ゴミの密閉管理
など複数の対策を組み合わせることで、安全対策を強化しています。
ゴミ管理は最も基本的なクマ対策
観光地や宿泊施設の周辺でクマを引き寄せる代表的な要因の一つが、生ごみや食料、未収穫の果実などの「誘引物」です。
観光地では、次のようなものがクマを引き寄せる可能性があります。
- 生ごみ
- バーベキューの残飯
- キャンプ場に放置された食料
- 柿や栗などの未収穫果実
そのため、密閉型ゴミ箱や耐熊仕様のゴミ箱、食品保管ボックスを導入する施設が増えています。
海外では、アメリカのイエローストーン国立公園でも耐熊仕様の食料保管設備が設置され、人とクマの接触リスクを減らす取り組みが行われています。

LINEやアプリを活用した情報共有
近年、多くの自治体で導入が進んでいるのがリアルタイムでの情報共有です。
例えば富山市では、LINEを利用したクマ出没情報通知サービスを運用しており、住民へ迅速に情報を配信しています。
また、自治体によってはホームページやSNS、防災メールなども活用し、登山者や観光客へ注意喚起を行っています。
クマは移動範囲が広いため、「今どこで目撃されたか」を迅速に共有できる仕組みは、被害防止に大きく貢献しています。
AIカメラによる24時間監視
近年、急速に導入が進んでいるのがAIカメラです。
従来の監視カメラとは異なり、AIが映像を解析してクマを自動検知し、管理者へリアルタイムで通知できる仕組みです。
これにより、
- 夜間監視
- 人手不足の解消
- 広範囲の監視
- 出没データの蓄積
などが可能になります。
北海道や富山県などでは、AIカメラを活用した実証事例も進められており、今後さらに普及が期待されています。
AIカメラだけではクマの侵入を防げない
AIカメラは、クマの早期発見や情報共有に有効な対策です。一方で、クマの侵入そのものを防ぐ設備ではありません。
また、通信障害や誤検知、カメラの死角などが発生する可能性もあります。そのため、AIカメラだけに頼るのではなく、電気柵やゴミ管理、巡回、利用者への注意喚起などと組み合わせて運用することが重要です。
温泉街・ホテルにおけるクマ対策の課題とは
AIカメラやセンサー技術の進歩によって、クマ対策は大きく進化しています。しかし、実際の現場では「機器を設置すれば解決する」という単純なものではありません。特に温泉街やホテルでは、宿泊施設ならではの課題が存在します。
AIカメラ導入で重要になるプライバシーへの配慮

AIカメラは、24時間体制でクマの出没を監視できる有効な手段です。一方で、温泉街や宿泊施設へ導入する場合は、宿泊客のプライバシー保護との両立が欠かせません。
クマ対策センターでは、実際に温泉街でクマ対策としてAIカメラの設置を提案した経験があります。その際、安全性の向上が期待される一方で、宿泊客への配慮から、カメラの設置場所や撮影範囲、映像の管理方法に制限が生じました。
特に、露天風呂や客室、宿泊者が頻繁に通行する場所では、クマの侵入経路だけを基準にカメラを設置することはできません。
そのため、山林との境界や施設の裏側、ゴミ置き場、駐車場周辺などを中心に、利用者が映り込みにくい場所を選定する必要があります。
AIカメラを導入する際は、検知性能だけでなく、利用者への周知、撮影範囲、映像の保存期間、閲覧権限などを含めた運用設計が重要です。
国内で進むクマ対策の導入事例
全国では自治体や宿泊施設を中心に様々な取り組みが始まっています。
長野県蓼科地区の温泉旅館
長野県茅野市の蓼科地区では、貸切露天風呂周辺へ電気柵を設置し、クマの侵入防止対策を実施しています。
また、自動ドアを手動式へ変更するなど、人とクマが接触しにくい環境づくりにも取り組んでいます。
長野県大町温泉郷
黒部観光ホテルでは、
- 二重フェンス
- センサーライト
- クマ鈴の貸し出し
- ゴミの密閉管理
- クマ撃退具の配備
など複数の対策を組み合わせ、安全性を高めています。
「一つの対策だけに頼らない」という考え方は、多くの宿泊施設でも参考になるでしょう。
富山市の情報共有システム
富山市では、LINEを活用したクマ出没情報通知サービスを運用しています。
目撃情報をリアルタイムで配信することで、住民や観光客へ迅速な注意喚起を実施しています。
また、防災無線やAIカメラとの連携も進められており、自治体によるデジタル技術の活用事例として注目されています。
観光客ができるクマ対策
自治体や宿泊施設だけでなく、旅行者自身が対策を行うことも重要です。
出没情報を事前に確認する
旅行前には自治体や観光協会が公開しているクマ出没情報を確認しましょう。
ゴミや食べ物を放置しない
食べ物の臭いはクマを誘引します。
キャンプ場や登山では、生ごみや食べ残しを必ず持ち帰ることが大切です。
単独行動を避ける
登山やハイキングでは複数人で行動し、クマ鈴やラジオなどで人の存在を知らせることが推奨されています。
クマに遭遇しても走って逃げない
クマを見かけた場合は、写真を撮るために近付いたり、大声を出したりしてはいけません。背中を向けて走って逃げると、クマを刺激したり、追いかけられたりする危険があります。
クマの様子を確認しながら、落ち着いてゆっくりと距離を取りましょう。近くに建物や車がある場合は、安全を確認したうえで避難してください。
子グマだけを見かけた場合も、近くに母グマがいる可能性があるため、決して近付いてはいけません。
安全な場所へ避難した後は、警察や自治体、施設管理者へ、目撃した場所や時間、クマの移動方向などを伝えましょう。
今後の観光地には「複合的なクマ対策」が求められる

クマ対策には「これだけ実施すれば十分」という万能な方法はありません。
現在は、
- 電気柵
- AIカメラ
- センサー
- LINE通知
- ゴミ管理
- 啓発活動
- 地域住民との連携
などを組み合わせる「複合的な対策」が主流となっています。
また、観光地では景観や宿泊客の満足度、プライバシーへの配慮も欠かせません。
地域の特性に合わせた対策を継続的に改善しながら運用していくことが、人とクマが安全に共存するための重要なポイントといえるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 温泉街でもクマは出没しますか?
はい。近年では温泉街や宿泊施設周辺での目撃事例も増えており、露天風呂周辺や駐車場などで対策を実施する施設もあります。
Q. AIカメラだけでクマ対策は十分ですか?
いいえ。AIカメラは早期発見に有効ですが、電気柵やゴミ管理、情報共有などと組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
Q. 観光客が最も注意すべきことは何ですか?
クマに遭遇しないためには、事前に出没情報を確認し、食べ物を放置せず、単独行動を避けることが重要です。
Q.ホテルや旅館にクマが出た場合、宿泊をキャンセルすべきですか?
施設周辺で目撃情報があっただけで、必ずしも宿泊を中止する必要があるとは限りません。ただし、出没場所や施設の対策状況によって危険度は異なります。宿泊前に施設へ連絡し、最新の目撃情報や露天風呂・駐車場の利用制限、安全対策を確認しましょう。
Q.クマ鈴だけで遭遇を防げますか?
クマ鈴は人の存在を知らせる手段の一つですが、すべての状況で遭遇を防げるわけではありません。風や沢の音で聞こえにくい場合もあるため、出没情報の確認、複数人での行動、食料管理などと組み合わせることが大切です。
まとめ
全国的にクマの出没件数や人身被害が増加する中、観光地や温泉街でも従来以上の安全対策が求められています。
現在は、電気柵・AIカメラ・LINE通知・ゴミ管理・啓発活動など、それぞれの対策を組み合わせた「複合的なクマ対策」が主流となっています。
一方で、宿泊施設では利用者のプライバシーや景観への配慮も重要であり、地域の実情に応じた運用が欠かせません。
クマ対策は「駆除か保護か」という二者択一ではなく、人とクマが接触する機会そのものを減らすことが重要です。自治体・宿泊施設・地域住民・旅行者がそれぞれの立場で適切な対策を継続することが、安全で安心な観光地づくりにつながるでしょう。
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参考文献
環境省「野生鳥獣の保護及び管理」
環境省「クマ類による人身被害等について」
観光庁「観光ピクトグラム」
富山市「クマ出没情報通知サービス」
PR TIMES「蓼科 親湯温泉 クマ対策」黒部観光ホテル「クマ対策」
日本養蜂協会『養蜂技術指導手引書』
Science Portal「過去最多のクマ被害で対策強化」
本記事は、ご提供いただいた調査資料を基に整理・編集しています。