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法律関係

クマと人は共存できる?里山管理・緩衝帯整備・誘引物対策の進め方

クマとの共存には「すみ分けを地域で運用する仕組み」が必要

近年、「クマとの共存」という言葉を目にする機会が増えています。

一方で、現在起きているクマ問題を見れば、「自然を守りながら仲良く暮らしていく」という言葉だけでは説明できない段階に来ていることも事実です。

かつてクマとの遭遇は、登山や山菜採りなど、主に人が山へ入ることで生じる問題として考えられてきました。しかし現在では、住宅地、学校周辺、道路、農地など、人が日常生活を送る場所でクマが確認される事例も珍しくなくなっています。

環境省によると、2025年度には全国で238人がクマによる人身被害を受け、出没件数、人身事故件数、事故者数、死者数はいずれも過去最多となりました。クマ問題は一部の山間地域だけの課題ではなく、人の生活圏をどう守るのかという社会全体の課題になっています。

背景には一つの原因だけがあるわけではありません。環境省の検討では、クマの分布域の拡大に加え、人口減少や高齢化、耕作放棄地や放任果樹の増加、里山利用の変化、河川や連続した緑地を通じた市街地への侵入、さらに堅果類の不作など、複数の要因が関係するとされています。

そして、こうした状況を受けて、国や自治体のクマ対策そのものも大きく変わり始めています。

クマとの共存に必要なのは「適切な距離」

クマとの共存というと、人と野生動物が近くで暮らしている姿を想像するかもしれません。

しかし、本当に必要なのは近づくことではありません。

むしろ、適切な距離を保ち続けることです。

人は街で安心して暮らす。

クマは本来の生息地で野生動物として生きる。

そして、その境界を地域社会全体で管理する。

そのためには、自治体だけでも、住民だけでも、捕獲従事者だけでも十分ではありません。行政、住民、研究者、農林業関係者、民間企業などが情報を共有し、地域ごとに対策を積み重ねていく必要があります。

クマとの共存とは、クマの存在を無条件に受け入れることでも、クマを排除し続けることでもありません。

人の命と暮らしを守りながら、クマが本来いるべき場所で生息できる環境を残すこと。

私たちは、そのための「すみ分け」を社会全体でつくっていくことが、これからのクマ対策に必要だと考えています。

なぜ「共存」という理念だけでは対策にならないのか

「クマと共存する地域をつくる」という方針は、地域の合意形成において重要です。しかし、理念だけでは、どこで何を守り、どこでどのような管理を行うのかが決まりません。

たとえば、住宅地の近くに放任された果樹があり、隣接する河川敷に草木が繁茂し、さらにその先に耕作放棄地が広がっている場合、住民への注意喚起だけでは出没リスクを下げにくい可能性があります。クマを引き寄せる要素、移動しやすい経路、隠れやすい場所、生活圏への侵入口を一つの地域課題として確認する必要があります。

環境省のガイドラインでは、人とクマのすみ分けを進めるため、地域を「排除エリア」「管理強化エリア」「緩衝地帯」「コア生息地」に分け、それぞれの目的に応じて施策を実施するゾーニング管理が示されています。[3]

ここで重要なのは、ゾーンを地図上で色分けすること自体が目的ではないという点です。ゾーンごとに、次のような運用上の判断を明確にします。

  • どの範囲を人の安全や生産活動を優先する地域とするか
  • 生活圏への侵入防止を強化する場所はどこか
  • 里山や河川など、移動経路になっている場所はどこか
  • クマの生息環境として保全する場所はどこか
  • どの主体が、どの時期に、どの対策を実施するか
  • 対策後に何を測定し、どの条件で見直すか

このような判断まで落とし込んで初めて、共存という理念が地域運用に変わります。

ゾーニングで「守る場所」と「管理する場所」を分ける

排除エリア:人の安全と生活を最優先する区域

排除エリアは、市街地、集落、住宅地、農地など、人の生活や生産活動が行われる区域です。環境省のガイドラインでは、人身被害や経済的損失の防止を目的とし、誘引物管理、電気柵や防護柵の設置、緑地や河川敷などの侵入経路に対する環境管理を行う区域とされています。[3]

自治体や施設管理者が最初に確認したいのは、排除エリアの境界です。住宅地だけでなく、次のような場所も含めて考えます。

  • 学校、保育施設、福祉施設
  • 公園、キャンプ場、観光施設
  • 通学路、通勤路、散策路
  • 農地、果樹園、家庭菜園
  • ごみ集積所、食品を扱う施設
  • 河川沿いの住宅地や施設
  • 山林に隣接する作業場所

排除エリアでは、「出没したら対応する」だけでは不十分です。侵入を防ぐための柵、誘引物の管理、草木の刈り払い、住民への情報提供を平時から行います。

管理強化エリア:生活圏への侵入を防ぐ重点区域

管理強化エリアは、クマの定着や排除エリアへの侵入を防ぐため、対策を重点的に行う区域です。里山、集落周辺の森林、河川沿い、生活圏に隣接する藪、耕作放棄地などが候補になります。[3]

管理強化エリアは、必ずしも一律の幅で設定する必要はありません。山林に接する側と、既に開けた土地が広がる側では、クマの移動経路や人との接触リスクが異なるためです。目撃情報、痕跡、被害場所、土地利用、河川や道路の位置を重ね、優先順位を付けて設定します。

また、管理強化エリア全体で毎年同じ対策を行う必要があるとは限りません。ある年度は河川沿いの刈り払い、次年度は集落周辺の柵整備、その後は果樹管理というように、限られた人員や予算をリスクの高い場所から配分します。[3]

緩衝地帯:人の活動とクマの生息を調整する区域

緩衝地帯は、コア生息地を除くクマの生息域です。人間活動とクマの生息を両立させる区域として位置付けられます。[3]

緩衝地帯だからといって、何も管理しないという意味ではありません。農林業やレクリエーションなど人の活動がある場合は、誘引物の管理、利用者への注意喚起、必要に応じた防護対策を行います。

一方で、緩衝地帯に対して生活圏と同じ基準で一律に環境改変を行うと、クマの生息環境や地域の生態系に影響を及ぼす可能性があります。何を目的に、どの範囲を、どの時期に整備するのかを整理することが重要です。

コア生息地:地域個体群の安定的な維持を図る区域

コア生息地は、クマにとって良好な生息環境を保全し、地域個体群を安定的に維持するために確保する区域です。行政界を越えてクマの生息に適した環境が続いている場合は、関係する自治体や関係機関が共通認識を持つことが求められます。[3]

コア生息地でも、ごみなどの誘引物管理や利用者への普及啓発は必要です。山間部や自然公園、登山道などでは、利用者がクマを引き寄せる行動を取らないよう、食品やごみの扱い、遭遇回避などの情報を分かりやすく伝えます。

里山と耕作放棄地を「放置しない」ための考え方

里山管理は景観整備ではなく侵入防止対策

里山は、人の生活圏と森林の間に位置することが多く、クマとの接点になりやすい場所です。利用が縮小した里山や管理されない林縁では、クマが身を隠しながら移動できる環境が生じる場合があります。

環境省のガイドラインでは、排除エリアや管理強化エリアの里地里山林、耕作放棄地などでヤブの刈り払いを行い、クマが生息・滞在しにくい環境を整備する考え方が示されています。[3]

ただし、刈り払いを行えば必ずクマが来なくなる、あるいは対策効果が保証されるという意味ではありません。次の観点で、対象地を選びます。

  • 住宅、学校、施設に近いか
  • 目撃や痕跡が確認されているか
  • 河川や林道などの移動経路とつながっているか
  • 見通しが悪く、クマが滞在しやすい状態か
  • 住民や作業者が日常的に利用する場所か
  • 刈り払い後の維持管理を継続できるか

単発の草刈りで終わらせず、実施範囲、実施時期、作業主体、次回点検日を決めます。刈り払いによって見通しが改善したか、目撃場所が変化したか、住民や利用者の不安が軽減したかも記録します。

河川や連続緑地は移動経路として点検する

森林から市街地へ連続する河川敷、河畔林、段丘林、防風林、都市公園などは、クマの侵入経路になり得る場所として、環境省のガイドラインで整理されています。[3]

このため、自治体では地図上で次の場所を確認するとよいでしょう。

1. 森林から市街地へ続く河川や緑地
2. 河川と住宅地が接近している場所
3. 高木や下草により見通しが悪い場所
4. 目撃情報や足跡などが集中する場所
5. 公園、遊歩道、学校周辺など人の利用が多い場所

樹木の伐採や下草の刈り払いを行う場合は、クマの侵入防止に必要な範囲を検討し、生物多様性や景観への影響にも配慮します。環境省のガイドラインも、伐採の時期や範囲について、地域の状況に応じた配慮が必要だとしています。[3]

耕作放棄地は土地所有者だけの問題にしない

耕作放棄地の管理は、土地所有者だけでは解決しにくい課題です。所有者が不明であったり、高齢化や人手不足により草刈りが難しかったりする場合があります。

自治体が地域運用として進める場合は、次のように役割を分けます。

  • 放棄地の位置と所有・管理状況を把握する
  • 生活圏や施設に近い場所から優先順位を付ける
  • 草木の刈り払い、作物の整理、柵の設置を組み合わせる
  • 土地所有者、自治会、農業関係者と作業方法を協議する
  • 作業後の再繁茂や再利用の可能性を確認する
  • 対策の実施状況を地図や台帳に記録する

耕作放棄地の解消は、クマ対策だけでなく、景観、防災、農地保全など複数の政策と関係します。環境部局だけで抱え込まず、農林、道路、河川、都市計画、教育、観光などの部局と連携して進めます。クマ対策では、個体群管理、生息環境管理、被害防除対策を組み合わせることが重要とされています。[3]

誘引物対策は「撤去」と「管理」を分けて考える

クマが人の生活圏に近づく要因として、放任果樹、未収穫作物、生ごみ、コンポスト、家庭菜園などが挙げられています。[3]

誘引物対策では、「クマが来たら撤去する」のではなく、平時から地域内の誘引物を把握します。

放任果樹と未収穫作物

柿やクリなどの果樹、収穫されない農作物は、住宅地や集落周辺でクマを引き寄せる要因になり得ます。果樹がある場所を地図化し、次のような区分で管理方針を決めます。

  • 継続して収穫する果樹
  • 剪定や伐採を検討する果樹
  • 所有者と管理方法を協議する果樹
  • 施設や通学路に近く、優先的に対応する果樹
  • クマの生息地側にあり、周辺環境と合わせて管理する果樹

「果樹をすべて伐採する」という一律の対応ではなく、場所、利用状況、所有者の意向、周辺のゾーン区分を踏まえます。伐採や剪定を行う場合も、作業者の安全確保と地域のルールを優先します。

農作物では、収穫時期を過ぎた作物を残さない、収穫後の残さを適切に処理する、農地の周囲に防護柵を設置するなど、複数の対策を組み合わせます。環境省の資料では、農地周辺の電気柵を二重に設置することで防護を強化する考え方も示されていますが、設置場所や方法は現地条件と専門的な助言を踏まえて判断してください。[4]

生ごみ、コンポスト、家庭菜園

住宅地や施設では、食品の廃棄物、調理残さ、コンポスト、家庭菜園の収穫残さなどが誘引物にならないよう管理します。

確認項目の例は次のとおりです。

  • ごみを屋外に長時間置いていないか
  • ごみ集積所に蓋や囲いがあるか
  • 収集日以外に生ごみが出されていないか
  • コンポストの設置場所や構造に問題がないか
  • 家庭菜園の収穫残さを放置していないか
  • ペットフードや飼料を屋外に置いていないか
  • 施設の厨房や飲食スペースから食品残さが漏れていないか

施設管理者は、設備を導入するだけでなく、職員や利用者が同じルールで運用できるよう、点検表や掲示を用意します。住民向けには、「何を置かないか」だけでなく、「いつ、どこへ出すか」「異常を発見したら誰へ連絡するか」まで具体化します。

侵入防止柵は設置よりも運用が重要

電気柵や防護柵は、侵入防止のための重要な手段です。しかし、柵は設置すれば自動的に機能するものではありません。

自治体や施設担当者は、次の項目を管理計画に含めます。

  • どの場所への侵入を防ぐのか
  • 柵の内側と外側に誘引物が残っていないか
  • 出入口や隙間が適切に管理されているか
  • 電気柵の通電状態を確認しているか
  • 草木が接触して機能を妨げていないか
  • 積雪、倒木、動物による破損がないか
  • 住民や利用者が誤って触れないよう表示しているか
  • 点検・補修の担当者と頻度が決まっているか

特に農地周辺では、柵の設置と誘引物対策を切り離さないことが大切です。柵の外側に未収穫作物や果樹が残っていれば、クマを近づける要因が残ります。柵の内側だけを守るのではなく、周辺環境を含めた防除として考えます。

なお、電気柵、防護柵、忌避用品、音や光を用いた機器など、個別の商品や設備について、クマを必ず撃退できる、被害を確実に防げる、安全であると保証することはできません。使用にあたっては、製品の仕様、現地条件、自治体や警察、施設管理者の指示、地域のルールを優先してください。

住民周知は「注意喚起」から「行動の標準化」へ

住民への周知では、恐怖をあおるだけでも、抽象的な呼びかけだけでも十分ではありません。住民が取るべき行動を、平時と出没時に分けて伝えます。

平時に伝える内容

  • 誘引物を屋外に放置しない
  • 果樹や家庭菜園を適切に管理する
  • クマの目撃や痕跡を見つけた場合の連絡先
  • 山林や農地で作業する際の安全確認
  • 登山や散策時の情報確認
  • 子どもや高齢者への見守り方法
  • 施設や学校の危機管理ルール

出没時に伝える内容

  • 目撃場所に近づかない
  • クマを追いかけたり、撮影したりしない
  • 自治体、警察、施設の指示に従う
  • 通学、通勤、散策などの経路を変更する
  • SNSなどで未確認情報を拡散しない
  • 屋外にいる場合は安全な場所へ移動する
  • 施設利用者には職員が統一した情報を伝える

クマの出没時は、自治体だけでなく警察、消防、学校、施設管理者、捕獲従事者などが関係します。環境省のガイドラインでは、関係者リスト、役割分担、連絡体制図、対応マニュアル、模擬訓練などを事前に整えておくことが重要とされています。[3]

施設では、次のような簡易フローをあらかじめ決めておくと、現場の混乱を抑えやすくなります。

1. 目撃情報を受けた職員が、場所・時刻・方向・距離を確認する
2. 施設責任者と自治体または警察へ連絡する
3. 屋外活動や出入口の利用を一時停止する
4. 利用者を安全な場所へ誘導する
5. 職員が独自にクマへ接近・追跡しない
6. 公的機関の指示に基づき、再開条件を確認する
7. 対応内容を記録し、マニュアルを見直す

銃猟、麻酔、はこわななど、出没時の捕獲方法には制度上の条件や安全上の留意点があります。施設や住民が独自に判断して対応するものではありません。自治体、警察、捕獲従事者、関係機関の役割分担と現地ルールを優先してください。[3][4]

効果測定は「対策をしたか」と「被害が減ったか」を分ける

クマ対策では、対策を実施したことと、実際に被害や出没が減ったことを混同しないようにします。

環境省のガイドラインでは、施策の実施状況だけでなく、施策目標やアウトカム目標につながったかを評価し、その結果を計画の見直しに活かす順応的管理が示されています。[3]

実施状況として測る項目

  • ゾーンを設定した範囲
  • 刈り払いを行った面積や区間
  • 管理した放任果樹の数
  • 撤去・収穫した未収穫作物の範囲
  • 電気柵や防護柵の設置箇所
  • 柵の点検・補修回数
  • 住民説明会や講習会の実施回数
  • 訓練の実施回数
  • 連絡体制やマニュアルの更新状況

結果として測る項目

  • ゾーン別の出没情報数
  • 生活圏や施設周辺の出没状況
  • 人身被害の発生状況
  • 農作物被害の状況
  • 誘引物の再発生状況
  • クマの移動経路の変化
  • 住民や施設職員の対応時間
  • 対策後の住民の理解度や不安
  • 捕獲や追い払いなどの対応結果

測定期間は、単月の増減だけで判断しないことが大切です。天候、食物資源、土地利用、作業時期、周辺地域の対策など、出没に影響する条件を記録します。

たとえば、刈り払いを行った後に目撃件数が減ったとしても、同時期に周辺の果樹管理や柵整備が行われていた可能性があります。逆に、出没件数が減らなくても、施設周辺への侵入がなくなり、農地被害だけが減っていることもあります。地域全体とゾーン別の指標を分けて記録することで、どの対策がどの場所で機能したかを検討しやすくなります。

自治体・施設・地域運営者が進める実務手順

1. 対象地域を地図にする

まず、住宅、施設、農地、里山、河川、耕作放棄地、果樹、ごみ集積所、過去の目撃場所などを地図上に整理します。

情報は完璧でなくても構いません。重要なのは、関係者が同じ地図を見ながら話し合える状態をつくることです。

2. リスクの高い経路を確認する

森林から市街地へ続く河川や緑地、住宅地に接する藪、果樹の多い場所などを確認します。出没情報が少ない場所でも、移動経路や誘引物が集中していれば、管理強化エリアとして検討します。

3. 誘引物を一覧化する

放任果樹、未収穫作物、生ごみ、コンポスト、家庭菜園、飼料、食品残さなどを、所有者・管理者・対応状況とともに整理します。

4. 優先順位を付ける

すべての場所を一度に整備するのではなく、人の利用が多い場所、施設に近い場所、複数の誘引要因が重なる場所、移動経路と考えられる場所から着手します。

5. 対策を組み合わせる

刈り払いだけ、柵だけ、周知だけではなく、場所ごとに必要な対策を組み合わせます。

  • 里山の林縁:刈り払い、見通しの確保、誘引物管理
  • 果樹のある住宅地:収穫、剪定、撤去の協議
  • 農地:電気柵、防護柵、未収穫作物の管理
  • 河川沿い:移動経路の確認、必要な範囲の樹木・下草管理
  • 公共施設:ごみ管理、利用者周知、緊急連絡体制
  • 学校周辺:通学路確認、保護者への周知、危機管理マニュアル

6. 役割と連絡先を決める

自治体の担当部署だけでなく、警察、消防、学校、施設管理者、自治会、農業関係者、捕獲従事者、河川管理者など、必要な主体を整理します。

7. 実施結果を記録する

作業日、範囲、担当者、写真、点検結果、出没情報、住民からの意見を記録します。記録があれば、翌年度の優先順位や計画の見直しに活用できます。

FAQ:クマとの共存と地域対策

Q1. クマと共存するなら、捕獲や排除を行わないということですか?

いいえ。共存とは、クマを人の生活圏に受け入れることではありません。人の安全を守る区域では侵入防止や排除を行い、クマの生息地では地域個体群の安定的な存続を図るという、場所ごとのすみ分けです。問題個体への対応や個体数管理についても、地域の状況、計画、法令、関係機関の判断に基づいて実施されます。[3]

Q2. 放任果樹はすべて伐採した方がよいですか?

一律に判断するのではなく、果樹の場所、利用状況、周辺のゾーン、施設や住宅との距離、管理できる人の有無を確認します。収穫、剪定、撤去、周囲の柵整備など、地域の条件に応じた方法を検討します。作業の実施可否や方法は、自治体や土地所有者、関係機関と協議してください。

Q3. 電気柵を設置すれば安心できますか?

電気柵は侵入防止対策の一つですが、効果や安全を一律に保証できるものではありません。設置場所、通電状態、草木の接触、出入口、破損、周囲の誘引物などを継続的に確認する必要があります。製品の仕様、現地条件、自治体や施設のルールを優先してください。

Q4. 里山の草刈りだけで出没を防げますか?

草刈りは環境管理の一つですが、単独で出没防止を保証するものではありません。放任果樹、未収穫作物、生ごみ、河川や緑地の移動経路、柵の状態、住民周知などを合わせて確認します。草刈りの範囲や時期は、クマ対策の必要性と生態系への影響を考慮して決めます。[3]

Q5. クマを見つけたら施設職員が追い払ってもよいですか?

施設職員や住民がクマに接近したり、独自に追跡したりすることは避けてください。利用者を安全な場所へ誘導し、自治体、警察、施設の定めた連絡先へ通報します。捕獲、追い払い、銃器や麻酔を用いる対応には制度上の条件と専門的な安全管理が必要です。[3][4]

まとめ

クマと人の共存を実現するには、クマを人の生活圏に近づけないための管理と、クマの生息地を守るための管理を、同じ地域計画の中で組み合わせる必要があります。

中心となるのは、次の五つです。

1. 排除エリア、管理強化エリア、緩衝地帯、コア生息地を整理する
2. 里山、河川、耕作放棄地、緑地を移動経路と滞在場所の観点から管理する
3. 放任果樹、未収穫作物、生ごみ、コンポストなどの誘引物を減らす
4. 電気柵や防護柵を適切に設置し、点検と補修を続ける
5. 出没、被害、対策実施状況を測定し、計画を見直す

共存は、クマと人が同じ場所で暮らすことではありません。人の生活圏では安全を守り、周辺では侵入を防ぎ、必要な場所で管理を行い、生息地では地域個体群の安定的な存続を図る。その役割分担を、地図、ルール、担当者、予算、記録に落とし込むことが、地域におけるクマ対策の出発点です。

クマ対策センターとしての見解

クマ対策で最も避けたいのは、単一の設備や単発の作業に過度な期待を寄せることです。柵を設置したから安心、草を刈ったから大丈夫、注意喚起を出したから十分、とは限りません。

重要なのは、地域のどこを人の安全を最優先する区域とするのか、どこを侵入防止の重点区域とするのか、どこをクマの生息地として保全するのかを関係者で共有することです。そのうえで、誘引物、移動経路、里山管理、柵、住民周知、出没時の連絡体制を組み合わせます。

また、対策の効果は地域や時期によって異なります。商品や設備の効果、安全、撃退を保証することはできません。自治体、警察、施設、土地所有者、関係機関の判断と現地ルールを優先し、専門家の助言を受けながら、記録と評価を重ねてください。

クマとの共存は、理想を掲げるだけでは進みません。人とクマの接点を減らす地域運用を継続し、状況の変化に応じて対策を更新すること。その積み重ねが、住民の安全と地域個体群の将来を両立させる現実的な道筋です。

参考資料

[1] 環境省「クマ被害対策等に関する情報」
https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/effort12.html

[2] 環境省「クマ被害対策関連資料」
https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-4a/

[3] 環境省「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(クマ編)令和8年度版」
https://www.env.go.jp/nature/choju/plan/plan3-2c/R08_kumaguideline.pdf

[4] 環境省「クマ被害対策パッケージ」
https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/kuma-counterplan-r071114.pdf

META_DESCRIPTION: クマとの共存に必要なゾーニング、里山・耕作放棄地管理、放任果樹や生ごみなどの誘引物対策、柵、住民周知、効果測定の進め方を解説します。

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