MAGAZINE 熊対策・熊被害対策の最新情報

法律関係

クマと人は共存できる?里山管理・緩衝帯整備・誘引物対策の進め方

クマと人は共存できる?答えは「近づける」ことではなく、地域で距離を保つ仕組みを続けること

クマと人の「共存」は、生活圏でクマと人が近くに暮らすことではありません。人の生活圏への侵入を防ぎ、周辺では地域の状況に応じて管理し、クマの生息地を保全する。その役割分担を地図・対策・担当者・連絡体制に落とし込み、関係者が継続して見直すことが出発点です。

自治体や地域の担当者は、まず現地の出没情報と自治体の注意喚起を確認し、地域を「排除エリア」「管理強化エリア」「緩衝地帯」「コア生息地」の4区分で整理します。そのうえで、放任果樹や生ごみなどの誘引物管理、里山や河川沿いの環境管理、電気柵・侵入防止柵の維持管理、住民周知を組み合わせます。[1][4]

なお、出没状況や対応方針は地域・時期によって異なります。本稿は地域運用の考え方をまとめたもので、個別地域の対応を一律に定めるものではありません。具体的な行動は、都道府県・市町村、施設管理者などが発信する最新の案内と現地ルールを優先してください。

「共存」は、同じ場所で暮らすことではなく、接点を減らすこと

クマ対策では、人身被害や農林水産被害などの軋轢を減らすことと、地域個体群を保全することの両方を見据えます。どの場所でも同じ対応をするのではなく、人の生活・生産活動を守る場所、生活圏への侵入を防ぐ場所、クマの生息環境を確保する場所を地域の関係者で整理します。[1]

「注意喚起を出す」「草を刈る」「柵を設置する」といった一つの対策だけで、出没や被害がなくなるとは限りません。クマを引き寄せるもの、移動しやすい場所、人が利用する場所を重ねて点検し、対策を組み合わせて、その実施状況と結果を分けて記録します。

環境省R8ガイドラインの4区分を地域の役割に翻訳する

環境省の令和8年度版ガイドラインは、人とクマのすみ分けを図るゾーニング管理として、次の4区分を示しています。排除エリアと管理強化エリアは、都道府県・市町村・地域住民などが関係者間で線引きし、対策を徹底する区域です。緩衝地帯とコア生息地は、必ずしも森林や山塊を境に明確な線で区切る必要はありませんが、確保する範囲や目的について関係者が共通認識を持つことが大切です。[1]

1. 排除エリア:人の生活・生産活動を守る

市街地などの居住地や農地が含まれます。誘引物管理や農地への電気柵などの基本的な被害防除を行い、森林から市街地へ連続する河川敷・河畔林・段丘林・防風林・都市公園などについて、必要な範囲の樹木管理や下草・ヤブの刈り払いを検討します。侵入したクマへの対応は、自治体等の判断と体制に基づいて行われます。[1]

2. 管理強化エリア:排除エリアへの侵入を防ぐ

排除エリアの周辺に設定し、クマの定着や生活圏への侵入を防ぐ区域です。生息環境管理、被害防除、捕獲等の対策を積極的に行う考え方が示されています。個体数管理を目的とする捕獲を行う場合の優先順位もガイドラインに記載されていますが、捕獲は地域計画、法令、権限・安全体制に基づく行政等の判断事項であり、住民や施設職員が独自に実施するものではありません。[1]

3. 緩衝地帯:コア生息地以外のクマの生息地

ガイドライン上、緩衝地帯は「クマの生息地のうちコア生息地を除いた地域」です。管理を目的とする保護管理ユニットで、目標個体数に向けた個体数管理を行う場合には、緩衝地帯でも実施できるとされています。したがって、「人とクマが必ず共存する帯」や「対策を行わない区域」と単純化せず、地域計画の目的と実際の土地利用に沿って位置づけます。[1]

4. コア生息地:地域個体群を維持する環境を確保する

地域個体群の安定的な維持を目的に、クマにとって良好な生息環境を確保する区域です。生息環境が行政界を越えて続く場合は、関係する都道府県・市町村等が連携して扱うことが重要です。人の利用がある場所では、利用者への周知やごみ等の管理も、現地のルールに沿って行います。[1]

ゾーン図は完成品ではなく、関係者の判断を揃えるための道具です。地図上には、住宅・学校・福祉施設・農地・里山・河川・藪・果樹・ごみ集積所・目撃や被害の記録などを重ね、境界や対策を定期的に見直します。生息地側の区域を行政界だけで機械的に切り分けない点にも留意します。[1]

里山・耕作放棄地・河川沿いは「どこを、誰が、いつ管理するか」を決める

人の生活圏に近い里山や耕作放棄地、河川敷などは、隠れ場所や移動経路、誘引物の有無を合わせて点検します。管理を行う場合は、目的・対象範囲・作業時期・土地や施設の管理者・安全確保・維持管理の担当を先に確認します。刈り払い等を行えば必ず出没を防げるわけではなく、樹木の伐採や草木の管理は、生態系、景観、河川管理、土地所有者との調整にも配慮して決めます。[1][4]

  • 林縁・藪:生活圏に近く、見通しや人の利用に課題がある区間を地図で特定し、必要な範囲の刈り払いと継続点検を検討する。
  • 河川・連続緑地:森林から住宅地・施設へつながる経路を確認する。樹木管理や作業の順序は、河川管理者などの関係者と協議する。
  • 耕作放棄地:土地の所有・管理状況、周辺の施設や農地、再繁茂の見込みを整理する。土地所有者だけに負担を寄せず、農林・環境・道路・河川など関係部局と役割を調整する。
  • 作業の安全:現場作業は出没情報を確認し、必要な安全体制を整えて実施する。クマの目撃や痕跡がある場所を住民や作業者が自ら調べに行くことは避ける。

誘引物は一覧化し、撤去・管理・再発防止まで決める

放任果樹、未収穫作物、生ごみ、コンポスト、家庭菜園の収穫残さ、飼料や食品残さなどは、地域で確認する誘引物の例です。状況は場所ごとに異なるため、何がどこにあり、誰が管理し、いつまでにどう対応するかを台帳にまとめます。[1][4]

確認対象地域で決めること
放任果樹・未収穫作物収穫を続ける、剪定・撤去を協議する、収穫後の残さを処理するなど、土地の所有者・管理者と方針を決める。一律の伐採は前提にしない。
ごみ・コンポスト屋外に出す時刻、容器や保管方法、収集日以外の扱い、点検担当を明確にする。
家庭菜園・飼料・施設の食品残さ収穫残さや飼料の保管・処理方法を確認し、施設では職員・利用者が同じ手順で運用できるよう周知する。
対応後の再発再び果実や作物が残っていないか、管理担当や対応期限があいまいになっていないかを定期確認する。

作業や撤去を所有者に依頼する際には、土地の権利関係、費用負担、作業時の安全、継続できる管理方法を関係者で確認します。クマを誘引する要因を一度取り除くだけでなく、翌季以降の管理者と確認時期まで決めることが実務上のポイントです。

緩衝帯・侵入防止柵・電気柵は、場所に応じた対策パッケージとして考える

用語に注意が必要です。R8ガイドラインの「緩衝地帯」はクマの生息地を分類するゾーン名です。一方、対策パッケージでいう「緩衝帯の整備」は、生活圏周辺で侵入防止を図る具体的な環境整備の文脈で使われています。両者を同じ範囲と決めつけず、ゾーニングと整備事業の対象・目的を分けて地図上で確認します。[1][4]

環境省の「クマ被害対策パッケージ」は、人の生活圏への出没防止策として、緩衝帯の整備、電気柵、放任果樹などの誘引物管理、ICT等による出没情報の収集・提供などを挙げています。また、緩衝帯の整備に侵入防止柵を組み合わせることや、農地周辺の電気柵を二重に設置する対策例も記載されています。[4]

これは、すべての地域に同じ設備を設置すれば安全になるという意味ではありません。現地の地形、作物、クマの出没状況、維持管理の人員、関係法令・管理者の条件を確認し、必要に応じて自治体や専門家に相談して選びます。電気柵や防護柵は、設置後も通電・破損・草木の接触・出入口・表示を点検し、担当者と補修方法を決めます。柵の周囲に誘引物が残れば、柵だけに依存した対策にはできません。

捕獲や追い払いを含む対応は、地域計画、関係法令、権限を持つ機関の判断と安全体制に従います。住民・施設職員が自ら捕獲や追跡を行う手順として読める説明は避け、役割分担と連絡先をあらかじめ共有してください。[1][4]

住民・施設に伝える内容を平時と出没時に分ける

平時に決めておくこと

  • 目撃情報・痕跡を見つけたときの自治体等への連絡方法と、現場に近づかないこと。
  • ごみ、果樹、作物、飼料などの誘引物を誰が管理し、いつ点検するか。
  • 学校・施設の屋外活動や通学路を見直す際の責任者、情報共有先、利用者への伝達方法。
  • 自治体、警察、学校、施設管理者、土地・河川管理者、捕獲従事者等の役割と連絡体制。

出没情報を受けたとき

  • 目撃場所へ近づかない。クマを追跡したり、撮影のために接近したりしない。
  • 屋外活動や施設利用の扱いは、自治体・施設の責任者が現地の状況と公式の指示を確認して判断する。
  • 住民・利用者には確認された情報と取るべき行動を伝え、未確認情報を事実のように拡散しない。
  • 対応後は、連絡・判断・利用制限・再開条件を記録し、手順を見直す。

参考情報として、BEARMAPでクマの目撃情報を確認できます。ただし、地図に表示がないことは、その地域にクマがいないことの証明にはなりません。掲載範囲・情報の時点や、自治体の公式発表と異なる点がないかを確認し、具体的な行動は自治体・施設の最新案内を優先してください。

実務の進め方:地図、優先順位、担当者、記録をひとまとまりにする

  1. 基礎情報を集める:自治体等が把握する目撃・被害情報、住宅・学校・施設・農地、河川・林縁、果樹やごみ集積所などを同じ地図で見られるようにする。目撃情報だけで個体数や危険度を断定しない。
  2. 4区分と対象範囲を協議する:排除エリア・管理強化エリアは関係者と線引きを検討し、緩衝地帯・コア生息地は地域個体群や土地利用を踏まえて目的と範囲を共有する。[1]
  3. 目的と優先箇所を決める:人の利用、施設・農地への近さ、誘引物、経路の連続性、過去の出没、管理可能性を見て、どのリスクを下げたいかを明記する。
  4. 誘引物の担当と期限を決める:所有者・施設管理者・自治会・関係部局と調整し、収穫、保管、撤去、点検などの実施者・時期を決める。
  5. 環境管理と防護を組み合わせる:必要な範囲の刈り払い、緩衝帯、侵入防止柵、農地周辺の電気柵、利用者への周知などを現地条件に合わせて選ぶ。[1][4]
  6. 出没時の連絡・判断手順を整える:自治体・警察・施設・学校・関係管理者等の連絡先、情報確認者、活動制限や再開の判断者を事前に明記する。
  7. 実施と結果を別々に記録する:作業範囲、日付、担当、点検・補修、周知・訓練を記録し、別にゾーン別の出没・被害状況や現場の変化を確認する。
  8. 定期的に見直す:対策実施と出没・被害の変化は同じ指標ではありません。季節、食物資源、周辺地域の対策なども記録し、短期間の増減だけで効果を断定せず、次の計画に反映する。

自治体・施設で相談先を探す場合は、総合問い合わせ窓口からご相談いただけます。自治体・施設のクマ対策や運用に関する相談窓口としての案内であり、製品・ドローン・GPS等の見積窓口を示すものではありません。

よくある質問

Q1. クマと共存するなら、捕獲や排除を行わないのですか?

そうとは限りません。環境省のガイドラインは、人の生活域での被害防止と、地域個体群の保全を両立させるため、4区分ごとに目的に応じた施策を行うゾーニング管理を示しています。捕獲等の要否や方法は、地域計画・法令・権限を持つ機関の判断と安全体制に従います。[1]

Q2. 放任果樹はすべて伐採すべきですか?

一律に伐採するのではなく、場所、利用状況、管理できる人、周辺の施設・農地やゾーンを確認し、収穫・剪定・撤去などを土地所有者や関係者と協議します。どの方法を選んでも、その後の管理担当と確認時期を決めてください。

Q3. 電気柵や侵入防止柵を設置すれば安心ですか?

柵は対策の一つですが、安全や効果を一律に保証するものではありません。設置場所や方式は現地条件と専門的助言に基づいて決め、点検・補修・出入口管理と誘引物対策を続けます。環境省のパッケージには緩衝帯と侵入防止柵の組合せ、農地周辺の電気柵を二重にする対策例がありますが、地域にそのまま当てはめるのではなく、関係者と適用を検討します。[4]

Q4. 草刈りだけでクマの出没を防げますか?

草刈りだけで出没を防げるとは言えません。誘引物、移動経路、土地の管理状況、柵、住民周知などを合わせて確認します。作業の範囲・時期・維持管理は、目的と生態系・土地管理上の条件を踏まえて決めます。[1]

Q5. クマを見つけたら、住民や施設職員が追い払ってよいですか?

クマに近づいたり、追跡したりしないでください。安全な場所へ移動し、自治体・警察・施設の定める連絡先に連絡して、公式の指示に従います。捕獲や追い払いを住民・施設職員が独自に行うことを勧めるものではありません。

Q6. BEARMAPに目撃情報がなければ、地域は安全ですか?

いいえ。地図に表示されないことだけで、クマがいない・安全だとは判断できません。地図の情報は参考の一つとして扱い、自治体・施設が発信する最新情報や現地の案内を確認してください。

まとめ

クマとの共存は、人とクマを近づけることではなく、人の生活圏とクマの生息地の接点を地域で管理することです。自治体・施設・住民が進める際は、次の順で実務に落とし込みます。

  1. 環境省R8ガイドラインの排除エリア・管理強化エリア・緩衝地帯・コア生息地を踏まえ、地域の目的と対象範囲を関係者で共有する。
  2. 里山、耕作放棄地、河川沿い、果樹、ごみ集積所などを地図と台帳に整理する。
  3. 誘引物の管理、緩衝帯、侵入防止柵・電気柵、出没情報の提供、住民周知を場所ごとに組み合わせる。
  4. 担当者、作業時期、安全確保、連絡先、点検・補修、出没時の判断手順を決める。
  5. 対策の実施状況と出没・被害の変化を分けて記録し、地域の状況に応じて計画を見直す。

単一の設備や作業で安全を保証することはできません。地域の最新情報と現地ルールを優先し、関係者が継続できる役割分担を整えることが、住民の安全とクマの生息環境をともに考えるための現実的な出発点です。

クマ対策センターとしての見解

対策を「やったか」だけで終わらせず、どの場所のどの課題を対象にしたのか、維持管理を誰が担うのか、結果をどう見直すのかまで一つの地域運用として整えることが重要です。柵・刈り払い・周知のいずれも単独で安全を保証するものではありません。現地の情報と関係機関の判断を基礎に、誘引物、移動経路、防護、連絡体制を組み合わせ、記録をもとに更新してください。

参考資料

  1. [1] 環境省「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(クマ類編)令和8年度版」
    https://www.env.go.jp/nature/choju/plan/plan3-2c/R08_kumaguideline.pdf(確認日:2026年10月21日)
  2. [4] 環境省「クマ被害対策パッケージ」
    https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/kuma-counterplan-r071114.pdf(確認日:2026年10月21日)

おすすめ製品

製品だけで安全を保証するものではありません。公式の説明、自治体・施設の案内、現地ルールをあわせて確認してください。

KUMA-911 クマ対策用撃退スプレーの商品ページへ
IKAZUCHI クマ対策機器の公式LPへ

SHARE

ブログ一覧