【クマ対策】クマハンター不足の実態とは?猟友会・高齢化・報酬問題から今後の課題まで徹底解説

クマ対策にはハンターの存在が大きい
近年、全国各地でクマの出没が相次ぎ、人身被害や農作物被害が社会問題となっています。環境省によると、ツキノワグマ・ヒグマともに人里への出没件数が増加しており、自治体では住民の安全確保が大きな課題となっています。
こうした状況の中で、クマの追い払いや捕獲を担っているのがハンター(狩猟者)です。
しかし現在、そのハンターの数は年々減少し、高齢化も深刻化しています。「クマは増えているのに、捕獲する人が減っている」という状況は、多くの自治体が抱える共通の課題です。
本記事では、クマ捕獲を担うハンターや猟友会の役割、ハンター不足の背景、実際の課題、そして今後求められる対策について、環境省などの一次情報や自治体への取材内容をもとに詳しく解説します。
クマを捕獲するハンターとは

クマを捕獲するハンターは、単に「狩猟を楽しむ人」ではありません。
自治体から依頼を受け、有害鳥獣として人里へ出没したクマの対応を行う重要な役割を担っています。
主な活動内容は次のとおりです。
- 市街地へ出没したクマの追い払い
- 人身事故防止
- 有害鳥獣捕獲
- 個体数管理
- 現場調査
- 被害拡大防止
特に住宅地へクマが侵入した場合は、自治体、警察、消防などと連携しながら、安全を最優先に対応します。
捕獲は最後の手段であり、状況によっては追い払いや監視によって対応するケースもあります。
猟友会とはどのような組織なのか
クマ捕獲の現場で中心的な役割を担っているのが猟友会です。
猟友会とは、狩猟免許を持つ狩猟者が所属する団体で、安全な狩猟技術の普及や、有害鳥獣捕獲への協力などを目的として活動しています。
自治体からの依頼を受け、
- クマ
- シカ
- イノシシ
- ニホンザル
などの有害鳥獣対策を行っています。
また、若手ハンターへの技術継承や安全講習なども重要な役割の一つです。
ハンターにはどのような人がなっているのか
「ハンター」と聞くと、山奥で生活している人を想像する方も多いかもしれません。
しかし実際には、さまざまな職業の人が地域の鳥獣対策に携わっています。
例えば、
- 農業
- 林業
- 建設業
- 自営業
- 会社員
- 退職後の地域住民
など、本業を持ちながら休日や自治体からの要請に応じて活動している人が多くいます。
そのため、クマ対応は「職業ハンター」が行っているというよりも、地域を守るために活動する狩猟者によって支えられているのが現状です。
警察官や自衛隊OBが活躍する地域もある
当メディアでは、神奈川県内の自治体で鳥獣対策を担当する職員へ取材を行いました。
その際、担当者からは、
「地域によっては、警察官や自衛隊OBが猟友会に所属し、有害鳥獣対策に携わっているケースもあります。」
という話がありました。
もちろん、全国すべての地域が同じではありません。
しかし、銃器を安全に取り扱う知識や、危険な現場で冷静に判断する経験を持つ人材が、地域のクマ対策に貢献している事例があることが分かります。
近年では、自治体職員自らが狩猟免許を取得し、有害鳥獣対策を行う**「ガバメントハンター」**の育成も進められており、従来の猟友会だけに依存しない新たな体制づくりも始まっています。
深刻化するハンター不足

現在、日本全国で最も深刻な課題となっているのが、ハンター不足です。
環境省によると、狩猟免許所持者数は1970年代には約50万人を超えていましたが、その後は減少が続き、高齢化も進んでいます。
その背景には、
- 山間部の人口減少
- 若者の都市部への流出
- 銃所持までの手続きの複雑さ
- 活動に伴う危険性
- 後継者不足
など、さまざまな要因があります。
特にクマ対応は命に関わる危険を伴うため、経験豊富なベテランに依存している地域も少なくありません。
ハンターの報酬と自治体が抱える課題
クマの捕獲は、命の危険と隣り合わせの仕事です。
現場では、夜間や早朝の出動、急な出動要請、山林での長時間の捜索、住宅地での緊張感のある対応など、高い専門性と冷静な判断が求められます。
しかし、その一方で報酬は自治体によって大きく異なります。
有害鳥獣捕獲は自治体から猟友会へ依頼されることが多く、出動手当や捕獲報奨金などが支払われますが、その金額や制度は地域ごとに違います。
また、クマが住宅地へ出没した場合には、住民の避難誘導や警察との連携、現場の安全確保など、捕獲以外の業務も数多く発生します。
こうした負担に対し、「危険性や責任に見合った待遇とは言えない」という声が現場から上がることもあり、クマの捕獲は命がけの仕事です。
しかし、クマ1頭あたりの報酬は自治体によって異なり、3万円前後に設定されている地域もあります。命の危険や装備費、活動時間を考えると、「この報酬で担い手を確保し続けられるのか」という課題が指摘されています。
自治体と猟友会の間で起きている課題
近年は、自治体と猟友会の関係が課題となるケースも報道されています。
例えば、
- 捕獲報酬に対する考え方の違い
- 発砲の判断を巡る責任問題
- 市街地での対応基準
- 猟友会員の高齢化による活動縮小
などが挙げられます。
特に住宅地でクマを駆除する場合は、安全確保を最優先にしなければならず、発砲には厳しい条件があります。
そのため、「住民の安全を守る」という目的は自治体と猟友会で共通していても、現場では責任の所在や判断基準が課題となることがあります。
近年は、環境省も自治体・警察・猟友会などの関係機関が連携し、迅速かつ安全に対応できる体制づくりを進めています。
ハンターになるには
「地域のために活動したい」「鳥獣被害対策に貢献したい」と考え、ハンターを目指す人も少しずつ増えています。
ハンターになるためには、以下のような手続きが必要です。
① 狩猟免許を取得する
都道府県が実施する狩猟免許試験に合格する必要があります。
狩猟免許は次の4種類です。
- 第一種銃猟免許
- 第二種銃猟免許
- わな猟免許
- 網猟免許
クマの捕獲では、地域や状況に応じて第一種銃猟免許やわな猟免許などが用いられます。
② 銃砲所持許可を取得する
銃を使用する場合は、狩猟免許とは別に警察から銃砲所持許可を受けなければなりません。
講習会や技能講習、身辺調査、健康診断などを経て、安全に銃器を取り扱えることが確認されます。
③ 狩猟者登録を行う
狩猟を行う都道府県で狩猟者登録を行い、狩猟税や保険加入などの手続きを済ませることで、狩猟が可能になります。
さらに、猟友会へ所属し、先輩ハンターから現場で経験を積みながら技術や安全管理を学ぶ人が多くいます。
クマ被害を減らすためには地域全体での対策が重要
クマ被害を減らすためには、ハンターだけに頼ることはできません。
クマを人里へ引き寄せない環境づくりが何より重要です。
例えば、
- 生ごみや収穫残さを放置しない
- 柿や栗などの放任果樹を適切に管理する
- 藪を刈り払い見通しを良くする
- 電気柵を活用する
- クマの目撃情報を地域で共有する
- 登山や山菜採りでは熊鈴や熊撃退スプレーを携行する
といった対策を継続することで、人とクマが遭遇するリスクを減らすことができます。
クマが出没した際には、自治体や警察の指示に従い、むやみに近づいたり写真撮影をしたりしないことも重要です。
まずは皆さんのお住まいの地域の熊情報を調べてみるのがいいかもしれません。

まとめ
全国でクマによる人身被害や農林業被害が増加する一方、その対応を担うハンターは高齢化や担い手不足という大きな課題に直面しています。
ハンターや猟友会は、地域住民の安全を守るために危険と隣り合わせで活動しています。しかし、後継者不足や待遇、自治体との連携など、多くの課題を抱えているのも現状です。
当メディアが神奈川県内の自治体担当者へ取材した際にも、警察官や自衛隊OBが地域の鳥獣対策に携わる事例や、新たな担い手確保に向けた取り組みについて話を伺いました。地域によって体制は異なりますが、クマ対策は行政だけでも、猟友会だけでも成り立つものではなく、地域全体で支えていくことが重要です。
今後は、若い世代の育成や制度の充実に加え、住民一人ひとりがクマを引き寄せない環境づくりを実践することが、人とクマが共存できる地域づくりにつながるでしょう。
参考資料
環境省「クマ類に関する施策・人身被害・捕獲状況」
環境省「狩猟制度の概要」
環境省「狩猟免許・狩猟者登録制度」
環境省「指定管理鳥獣捕獲等事業」
農林水産省「鳥獣被害対策」
警察庁「猟銃等所持許可制度」
一般社団法人 大日本猟友会
北海道庁「ヒグマ対策」
秋田県・岩手県・山形県など各自治体のクマ対策資料
神奈川県内自治体 鳥獣対策担当者への取材(2026年)
NHK NEWS WEB「クマ被害・有害鳥獣対策関連記事」
朝日新聞デジタル「クマ駆除・猟友会関連記事」
※本記事は、環境省などの公的機関が公表している資料および自治体への取材内容をもとに作成しています。地域によって捕獲体制や制度、報酬体系は異なるため、詳細は各自治体の運用をご確認ください。